福岡整形外科病院

関節リウマチ

関節リウマチとは

関節リウマチとは、関節の炎症がもたらす痛みや腫れ、変形を特徴とする病気です。また初期の頃には微熱やだるさ食欲不振などもみられます。炎症をそのままにしておくと、関節の骨や軟骨が破壊され変形を来し、日常生活に支障を来すこととなります。

関節リウマチの原因は、いまのところはっきりしたことは分かっていませんが、体内に異物が侵入した時にそれを駆除する免疫という機能に異常を来し、自分自身の正常な部分を攻撃すること(自己免疫疾患)と考えられています。

男女比は1対4と圧倒的に女性が多く、発症年齢は30〜50歳代、特に40歳代が最も多いとされています。リウマチとは進行性の経過をたどる対称性、多発性の関節炎をいいます。

検査と診断

関節リウマチの診断は、特異的な症状や検査結果(特有の検査)は現在のところは見つかっていないため、いくつかの症状および血液、X線結果から総合的に行われています。

関節リウマチの診断基準(1987年)

  1. 朝のこわばりが少なくとも1時間以上にわたってみられる。
  2. 3つ以上の関節に炎症による腫れがみられる。
  3. 手首、手指のつけ根かその一つ先の関節に炎症による腫れがみられる。
  4. 左右対称の関節に炎症による腫れがみられる。
  5. 皮下結節(大豆くらいのしこり)が肘や膝にみられる。
  6. 血液検査でリウマトイド因子が陽性である。
  7. X線で手の関節に骨の萎縮(関節近くが黒く写る)などの変化がみられる。
    (1〜4までの症状は6週間以上続くこと)

以上の7項目のうち4項目以上があてはまる場合を関節リウマチとする、とされています。ただし、これらは1987年と古く、現在ではより早期に診断できるような内容(診断基準や血液検査など)も考慮されています。

一般的な血液検査

  • 炎症反応(リウマチ関節炎の程度を診る)
    血沈:体内に炎症があると赤血球が沈む速度(血沈)が速くなります。
    C反応タンパク(CRP):体内に炎症が起こると血液中にCRPという特殊なタンパクが現れます。リウマチの病勢を診る時に重要です。
  • 免疫学的検査
    リウマチ因子:自己抗体であるリウマチ因子をもっているかが分かります。(健康な人が持っている場合もあります)
  • 生化学的検査
    GOT、GPT:薬の副作用での肝機能障害がないかが分かります。
    血清クレアチニン:薬の副作用が腎機能に出ていないかが分かります(早期では尿にタンパクが出ていないかの検査も重要です)
  • 貧血や薬の副作用を調べる
    末梢血:白血球数が多い場合はリウマチの炎症が高いこと、少ない場合は薬の副作用が考えらます。赤血球とヘモグロビンが少ない場合は貧血、薬の副作用による胃潰瘍などが考えられます。血小板はリウマチの活動性が高いと増加、減っていると薬の副作用が考えられます。

治療方法

関節リウマチは現在でも決定的な原因や確実な治療法が分かっておらず、いち早く病気を見つけて治療を開始することが病気の進行を食い止める(寛解)ためには重要と考えられています。

関節リウマチの治療法は、免疫の異常を治す免疫治療剤(抗リウマチ剤)を中心として、他の薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどを組み合わせていくことです。リウマチの治療には早期診断、早期治療が重要です。ここでは治療の中心となる薬物療法と機能の改善を目指す手術療法についてお話します。

薬物療法

抗リウマチ剤

免疫の異常を改善して病気の進行を抑える薬です。免疫調整剤や免疫抑制剤などがあり、リウマチの原因とされる免疫の異常を調整もしくは抑える作用がある薬です。効果が出るまでは1~3ヶ月程度かかります。

副作用は皮疹やかゆみ、肝障害や腎障害、間質性肺炎、免疫抑制剤では骨髄の障害などがあり、定期的な血液、尿検査などで副作用が出てないかをチェックしながら使用することが大切です。早期からこの薬でリウマチを抑えることができれば寛解できる場合もあります。

抗炎症剤

炎症を抑えて痛みを和らげる薬です。

非ステロイド系抗炎症剤

いわゆる痛み止めの薬で打撲や腰痛などにも用いられる薬です。胃腸障害の副作用があるため通常は胃薬と併用します。

ステロイド系抗炎症剤

より早期に強力に痛みや炎症を抑える薬です。強い薬ですので副作用も多いですが(胃、血圧、糖尿、骨粗鬆症、感染など)、安全に早期に使用すれば効果も大きいです。関節内注射などにも用います。ただしリウマチを完治させる訳ではありません。

手術療法

薬物療法でも頑固に残った関節の炎症や、関節の破壊が進行し日常生活に著しく不自由を強いられている場合などには手術療法が選択されることがあります。

滑膜切除術

関節の裏打ちをする滑膜がリウマチの炎症の場で、滑膜炎から関節液が出ることにより関節の腫れが起こって来ます。この滑膜炎を取り除くことで痛みや破壊を防止する手術です。通常は手、手指、肘などの上肢に行われることが多いですが、薬物療法によるコントロールが良くない場合は再発することもあります。

人工関節置換術

リウマチが進行して関節破壊が起これば、これを薬で元に戻すことはできません。この場合壊れた関節を取り除いて人工物の関節に置き換える手術が行われます。

主に股関節や膝関節など歩くことに障害があるリウマチ患者さんに適応があります。リハビリや定期的な検診が必要ですが、関節が安定し、痛みが和らぐことが期待できます。

関節固定術

リウマチの関節は動きがあることで痛みや破壊が起こって来ます。そこで壊れた関節を1本の骨のように固定してしまうことで痛みをとる手術です。主に足首や手指の関節に行われます。

動きがなくなることで不自由さがあると思われがちですが、痛みのためもともとの動きが悪い患者さんや関節がぐらぐらの患者さんに行うことがほとんどです。

そのほか、手指の腱をつなぐ手術(腱形成術)、足趾の変形した関節を取り除いてまっすぐにする手術(足趾形成術)などの手術があります。

リウマチ治療薬(生物学的製剤)について

生物学的製剤とは、最新のバイオテクノロジー技術を駆使して開発された新しい薬で、生物が産生した蛋白質を利用して作られています。

現在、日本ではレミケード、エンブレル、ヒュミラ、アクテムラという4種類の生物学的製剤が使用され強力な治療効果が明らかになっています。いずれも注射で皮下注射や点滴で用います。糖尿病のかたがインスリンを自己注射することがありますが、エンブレル、ヒュミラは自己注射も可能なお薬です。

日本より以前から発売された欧米では、このような生物学的製剤を比較的早くから使用することで、より良好な結果がすでに報告されており、日本でも今後もリウマチの治療でさらに広がっていくものと期待されます。

ただし、よく効く薬である以上、副作用にも十分注意する必要があります。リウマチの悪い炎症を抑えると同時に、自分の抵抗力であるよい炎症も抑えるため肺炎や結核になりやすく十分注意をする必要があります。

このためすべてのリウマチ患者さんに、この薬を使いましょうというわけではなく、リウマチの強さ、そのひとの年齢や体力などを考慮して使用すべきかが判断されます。それでもこの薬剤が広まっているのは、やはり従来の薬剤にない良好な効果が期待できるためであり、今後もさらに開発された生物学的製剤が発売される予定です。

また、生物学的製剤のもうひとつの問題はその値段です。通常病院にかかるように保険診療で行うのですが、このお薬だけで年間にして50万円近くが患者さんの負担になります。

基本的にはリウマチがあるかぎり、お薬が効かなくならないかぎり続ける必要があります。今後薬が安くなるか、行政にがんばっていただいて、何らかの医療補助が出るようになればと期待しています。

最後に

当院では年間約300例超の人工関節手術を行っており、約60例のリウマチ患者さんが手術を受けられております。また近年では関節リウマチに対する新薬の開発も進んでおり、これらの投薬治療も行っております。関節リウマチは一人一人症状も病気の進行度も異なりますので、気になる方やお困りの方は是非一度御相談下さい。

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