疾患の主な症状
運動時の腰痛・背部痛、骨盤周辺までの痛みがあり、また腰椎を後ろにそらせた時に痛みが強くなります。安静で一時的に軽快しますが、運動すると症状が再発します。時に神経の圧迫により、下肢にしびれや痛みを伴うこともあります。
とくにスポーツをしている小中学生で、2週間以上続く腰痛があれば、腰椎分離症を疑う必要があります。
原因
腰椎分離症は、成長期の過度な運動により起きる疲労骨折の一つと考えられています。多くは体が柔らかい小中学生の頃に、ジャンプ動作や腰をひねったりそらせたりする繰り返しのストレスで、腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。
一般の人では5%程度に分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が分離症になっています。分離症は主に10歳代で起こりますが、それが原因となってその後徐々に腰椎がズレを生じて「分離すべり症」に進行していく場合があります。
検査と診断
分離症の診断は、側面や斜めのレントゲン(X線)像で行います。分離部が進行するとレントゲンでも容易に判定できますが、ごく初期ではレントゲン上ではわからないことも多くみられ、CT検査やMRI検査が必要になります。特に病状の進行度合いを正確に判断するためには、CT検査やMRI検査が有用です。また分離症の治癒過程の確認にもCT検査やMRI検査が用いられます。
分離症の進行程度を、CT検査によって、初期、進行期、終末期に分けられます。
MRI検査では、分離症の初期に見られる骨髄浮腫(骨の中の炎症所見)を確認でき、初期の正確な診断には必要です。
治療法
分離の進行程度によって、分離部の骨癒合(骨がつながる)の可能性があると判断された場合、もしくは分離部が偽関節(骨がつながらない状態)になっている場合とでは、治療法が異なってきます。
初期から進行期の分離症は、スポーツ活動を禁止、コルセットを装着することによって骨折がつながる可能性があります。通常の骨折に対する治療と同様の対応をします。約2~3ヶ月間、部活動のみならず体育も含め全ての運動を禁止します。骨折の治療と同じで、固定して骨を癒合させるためであり、運動を続けると偽関節となって骨癒合が望めない状態になることを防ぐことが大切です。初期の分離に対し、適切な治療を行なったときに90%に近い骨癒合が期待できるといわれています。しかし、分離部は骨がつながりにくい所でもあり、注意が必要です。運動を止めると1ヶ月ほどでほとんどの腰痛は消失します。2~3ヶ月後、CTやMRIで骨折の治癒を確認してから運動を再開します。
骨折が治らず、骨折部が離れたまま偽関節となったとき、あるいはすでに偽関節の終末期の腰痛に対しては、痛みを和らげる治療が主体となり、体操とコルセットで痛みが取れ次第、運動の再開が可能です。ただ分離が存在することで、腰椎が不安定となり腰痛が再発することがあります。しばらくの間、軟性コルセットを着用し、さらに体操を継続することが大切です。腰椎分離を予防するため、とくに小学生のスポーツでは、腰に負荷が集中する練習は避け、全身をバランスよく使うような工夫が必要です。さらに単一のスポーツだけに取り組むのではなく、複数の種目の練習を取り入れることも効果的です。
時に、腰痛や神経根圧迫によるお尻や下肢の痛みで、日常生活や仕事に支障が生じれば、腰痛の固定術や神経の圧迫を除去する手術が行われます。
日常の対策
腰椎分離症は、スポーツをしている発育期の小中学生で、持続する運動時の腰痛があれば、まず疑わなければならない疾患であり、早期診断が重要です。できるだけ早い段階で検査・診断を行い、骨癒合できるような適切な対処が必要です。
分離症があっても、強い痛みや日常生活の障害なく生活できる場合が大部分です。腹筋・背筋を強化して、一般的な腰痛予防を心がけましょう。