最近靴やハイヒールを履くと、足の親指の付け根が痛くなってきた。
親指が外側を向くようになり、人差し指(第2趾)と当たって痛くなってきた。
さらに足の裏に痛いタコができ、普段の歩行もままならなくなってきた。
そんな症状でお困りではないですか?それは「外反母趾(がいはんぼし)」かもしれません。
代表的な症状は以下のとおりです。
靴やハイヒールを履くと足の親指(母指(ぼし))の付け根が痛くなる。
母趾の付け根が赤く腫れている。
母趾が「く」の字状に外側に曲がってきた。
今までの靴が狭くなってきた。
足の裏に胼胝(べんち)(タコのこと)ができ、普通の歩行でも痛くなってきた。
母趾が人差し指(第2趾)の下にもぐりこみ、さらに痛みがひどくなってきた。
外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、「く」の字のように変形し、母趾の付け根の腫れや痛みのために、靴を履いての歩行に支障をきたす状態をいいます。さらに悪くなると、足の裏に胼胝(タコ)ができたり、母趾が第2趾の下にもぐりこんだりすることもあります。
関節リウマチの合併症として生じることもありますが、原因としてはハイヒールなどの先の細い靴、性(9対1で女性に多い)、遺伝的要素(母、祖母に外反母趾が多い)が関係してきます。
最近ハイヒールを履く女性が多くなり、それにつれて外反母趾が増加しておりますので、靴の影響が最も考えられます。遺伝的影響として、足の形や足趾間の靭帯・筋肉の緩みや弱さなどによる軟部組織のアンバランスなどが考えられます。
検査と診断
外見からでも診断は可能ですが、正確には足部のレントゲン写真で診断します。第1中足骨と第1基節骨のなす角を外反母趾角と言い、15°までを正常、15~30°までを軽度、30~40°までを中等度、それ以上を重度としています。
また第1中足骨と第2中足骨の長軸がなす角度をM1M2角と言い、10°までを正常としています。※右図
同時に偏平足や開張足(足趾の付け根の横幅が広がった状態、つまり横アーチが低下)を合併することもあります。ただし、これはあくまでも便宜的な分類で、痛みが必ずしも重症度に比例しません。治療のポイントは痛みを和らげることにあり、足の形を元の形に戻すことではありません。
治療方法
保存療法(手術しない治療法)
装具療法と運動療法があります。中等度以上の外反母趾は、痛みが強くなったり、変形が進む事が多いので、予防することが重要です。
靴を選ぶことが最も大切で、ハイヒールや先の細いパンプスなどを避け、ヒールは3cm以下、趾が動かせる余裕があり、前後に滑らず趾の付け根の周りがきつくない靴を選びましょう。
靴に当たって痛いため、幅が広過ぎる靴を選びがちですが、足の内側と外側の支えが不足し開張足になりやすくなるので、突出部のみを押し出して靴を改造したほうが良いでしょう。
装具療法
まず、アーチサポート(靴の中敷のようなもので、土踏まずの部分を少し高くする装具)は縦アーチを、中足骨パッド(足趾の付け根の部分にある出っ張り)は横アーチの低下を防止し、痛みを和らげます。しかし、高くしすぎると、靴が浅くなり甲が当たったり、踵での支えが悪くなります。
その他には、趾の間に挟むセパレーター(ベルクマン、スーパートンチャンなど)、外転装具があり、それらをいくつか合わせて使うこともあります。※右図
運動療法
足趾でのタオルをつまみ寄せる訓練、ホーマン体操(ゴムバンドを両方の母趾にかけ、母趾を内側に動かす訓練)などがありますが、変形を元にもどす効果はなく、いずれも進行を遅らせる程度の効果です。それでも痛みが強くなる場合には手術を行うことになります。
手術療法
いろいろな方法がありますが、中足骨の遠位部(趾先に近いほう)または近位部(足首に近いほう)で、第1中足骨を骨切りし、母趾の変形を矯正します。固定はチタン製のスクリュー 1本を利用します。必要に応じて筋肉の付け根の部分を切り離したり、緩めたりして、骨以外の部分を処置します。また、重症度に応じて手術を使い分けたりもします。
術後の合併症としては、第1中足骨が短くしすぎたり、母趾が上を向いていたりすると、新たに第2中足骨骨頭部の足の裏側に痛みを生じることもあります。また矯正が行き過ぎると、逆に内反母趾変形を生じることもあります。
外反母趾の治療は、まず痛みを和らげることが優先され、必ずしも見た目を良くする手術ではありません。仮に形を整えても不適切な靴を履き続ければ変形は再発します。
日常の対策など
まずは靴をできるだけスニーカーなどにして、どうしてもハイヒールを履かなければならない時にはその時だけ履くようにして、両方持ち歩くようにしましょう。先に述べたように、足趾でタオルを引き寄せる訓練、ホーマン体操を日常の生活に取り入れてください。
また、仮に手術を行う場合においても、手術時間は通常40分程度で済みますし、たいていの方の経過は良好です。主に遠位での骨切り術であるLindgrenの手術を行っております。
固定は、右図のようにスクリュー1本を利用して固定することがほとんどです。このスクリューはチタン製で支障が無ければそのまま骨の中入れておいても大丈夫で、取り外すことは必要ありません。外反母趾で困っていらっしゃる方は外来を受診し、医師と相談してください。