へバーデン結節とは 

へバーデン結節とは?

指の第1関節(DIP関節:1番指先の関節)の背側にできる膨らみを指し、この病気を1802年に報告した英国の医師William Heberden博士の名にちなんでヘバーデン結節と呼ばれています。

その後、物理学者のWilhelm Conrad Rontgenが1895年にX線を発見し医療に応用されるようになり、現在この指のふくらみは年齢に伴う変形性関節症と判明しています。

変形性関節症とは、関節の表面を覆う軟骨の老化や摩耗によって、骨に直接負荷がかかり、骨が徐々に変形する加齢性の疾患です。

母指の付け根(CM関節)に生じれば母指CM関節症と呼びますし、人差し指から小指までの第2関節(PIP関節)に生じるとブシャール結節(Bouchard結節)と呼びます。

ヘバーデン結節の症状

原因

正確な原因は不明ですが、40歳以上の女性に多く発症します。成因としては、加齢や指先の過度の使用などで起こるのではないかといわれています。

また、へバーデン結節は中高齢の女性に多く発症することから、背景に女性ホルモンの変調やストレスが多くかかる環境やストレスを受けやすい体質なども関係しているようです。

遺伝性は証明されておりませんが、母娘、姉妹間で高率に認められています。しかしながら、関節リウマチなどの膠原病とは異なる病態です。

症状

症状は人差し指から小指にかけてのDIP関節に炎症が起こることで、赤く腫れたり、痛みに過敏になります。そのほか、指のこわばりを感じたり、強く握ることが困難になっ たり、安静時でも痛みを感じることがあります。

DIP関節の背側に水ぶくれのようなもの(ミューカスシスト、ガングリオン、粘液嚢腫などと呼ばれます)ができることもあります。

また変形性が進んでくると痛みが落ち着いてくることが多いのですが、動きが悪くなったり、指がまっすぐでないことを自覚するようになります。

  1. ① 指先に力が入りにくい
    (包丁で硬いものが切れない、容器のふたが開けられない、つまみにくい)
  2. ② DIP関節の痛み
    (ピリピリやチクチクする、強く握れない、ぶつけたときに激痛が走る)
  3. ③ DIP関節の動きが悪い(特に伸ばす方)
  4. ④ DIP関節が赤い、腫れている
  5. ⑤ DIP関節が変形している、グラグラ動く

こうした症状がみられる場合は、へバーデン結節の可能性があります。

へバーデン結節 症状 強く握れなくなる
へバーデン結節 症状 動きが悪くなる
へバーデン結節 症状 水ぶくれ(ミューカシスト)

診断と検査

へバーデン結節の診断は、視診、触診などの理学所見(診察)とX線による画像診断が行われます。

症状の項で示しましたように、DIP関節(1番指先の関節)の腫れや熱感、変形、動きの悪さ、痛みの有無を診察することのほか、X線では、関節の間隙(骨と骨の間)が狭くなったり、関節が壊れたり、骨のとげ(骨棘といいます)が突出するなどの、いわゆる変形性関節症の所見があれば、へバーデン結節と診断されます。

同時に手のひら側の指の付け根に押さえると痛みを感じる場合は、指の腱鞘炎やばね指が同時に生じている可能性があります。鑑別する病気としては、乾癬性関節炎(皮膚の発疹を伴う関節炎)などのほかに、最も重要なのは関節リウマチです。

関節リウマチの症状は、両側性におこる関節痛や腫れ(腫脹)、炎症による体のだるさ、朝のこわばりなどから起こることが多いのですが、手指の場合の発症部位は手関節(手首)や指ではPIP関節(指先から2番目の関節)、MP関節(指先から3番目)のことが多く、DIP関節に起こることはほとんどありません。

またX線でもリウマチの場合は骨が炎症によって溶けてゆくのに対して、へバーデン結節では、骨が負担などにより増殖している(骨棘など)像が診られるため、区別することができます。

へバーデン結節の場合の痛みは、ある一定期間を過ぎれば治まることが多いのですが(多少変形は残りますが)、関節リウマチは進行性の多関節炎ですので、診察やX線検査のほかに、血液検査などを行うことで早期に診断し、早期から治療することが重要であると言われています。

指の変形、痛みが何の病気で起こっているのかを診断してもらうことが重要です。

治療法

へバーデン結節の治療は、安静と対症療法(保存治療)が中心となります。

腫れや熱感があれば、患部を冷やしたり、軽くマッサージを行ったり、テーピングや装具などにより関節の安静を保つ(無理をさせない)ことで痛みを軽減させることはできます。また、痛みが強い場合は漢方や消炎鎮痛剤を飲んだり外用剤(湿布や塗り薬)を使ったりします。

へバーデン結節は、先ほども述べましたように、多少個人差があるものの、数か月~数年のうちに痛みは落ち着くことが多いので、手術に至ったり希望される患者さんは多くありません。

へバーデン結節の治療

ただ進行予防として炎症を早期に沈静化させることも重要で、更年期障害などのホルモンバランス変化に対するサプリメントや、体調や循環改善目的の漢方、局所の炎症を早期に改善させるステロイド注射なども一緒に検討します。

手術は、変形が進行して痛みが消えなかったり、日常生活に支障をきたしたりした場合は行うこともあります。手術法としては、でっぱった骨(結節部、骨棘)や水ぶくれ(嚢胞)を切除する関節形成術や、傷んだDIP関節(1番指先の関節)のグラつき(不安定性)を改善させる関節固定術が一般的に行われています。

関節形成術は外観も改善しますし、関節固定は最も使いやすい位置で固定し、痛みも無くなります。膝関節や股関節などの下肢関節に対して、進行してしまった変形性関節症には、人工関節置換術が一般的に行われております。手指に関しても最近になり開発されつつあるようですが、まだ一般的ではないようです。

最後に

へバーデン結節は、外来診療において中高年女性に比較的よくみられる病気であり、日常生活の支障、痛みとともに関節リウマチではないかと心配して来られる患者さんが多いです。

病院を受診していただき、症状の診察やX線検査、血液検査などを行うことで、その心配を解消することができます。また、診断がついても加齢性の疾患であるため、痛みを我慢しておられる方も大勢おられるようです。最近、指の痛みや変形で悩んでいるといった方は是非一度ご相談ください。

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